□□□□□ 齲 蝕 □□□□□
[目次]

基本構造

エナメル質

エナメル小柱、エナメル小柱鞘、レチウス線、エナメル叢、エナメル葉、エナメル紡錘、エナメル象牙境。
象牙質
象牙芽細胞、象牙芽細胞突起、象牙細管、象牙前質、管周基質。
セメント質
線維性セメント質(=無細胞性セメント質)、細胞性セメント質、シャーピー線維、セメント前質、セメント芽細胞、セメント細胞、セメント小腔、セメント細管、セメント質層板、セメント象牙境。

学 説

化学細菌説 (Miller, 1890)
寄生説 (Baumgartner, 1911)
スルファターゼ説 (Pincus, 1944)
蛋白溶解説 (Gottlieb, 1947)
キレート説 (Martinら, 1954; Schatzら, 1957)

病 因

1.外 因
 1)原因菌:1954年にOrlandらの無菌動物実験によって細菌の存在が必要とのことを確認。1910年以来、Bacillus acidophilusが注視される。1970年以降、1924年にClarkに指摘されたStreptococcus mutansの重要性が再び再認識される。
 2)食べ物:乳酸を産生するには、炭水化合物が必要。
 3)歯 垢:原因菌の繁殖場所になる。

2.内 因
 1)歯質
 2)全身因子
  (1)性:一般に女性がかかりやすい。
  (2)年 齢:若年者がかかりやすい。
  (3)生活様式:粗食の方がかかりにくい。
  (4)全身性疾患:糖尿病、胃腸疾患、熱性疾患では、乳酸発酵が活発。
 3)局所因子
  (1)歯の種類:大臼歯の咬合面には多く、下顎の前歯には少ない。
  (2)歯の隣接状態
  (3)歯の排列状態:排列が不正な場合、齲蝕が発生しやすい。
  (4)歯肉の状態:歯周ポケットができると、歯垢が多量に沈着、齲蝕を誘発。また、歯肉が退縮すると、根面齲蝕ができる。
  (5)唾 液:分泌量が減少したり、粘稠度が増えると、齲蝕が多発。放射線治療による口腔乾燥症にみられる。

3.カイスの輪
 1969年にKeyes, P.H.は外因として原因菌食物、内因として歯の感受性を選び、三者が満たされた場合にのみ齲蝕が発生。

分 類

<進行速度>
急性齲蝕
慢性齲蝕
停止性齲蝕

<発生部位>
小窩裂溝齲蝕
平滑面齲蝕
歯肉縁下齲蝕
根面齲蝕

<進行様式>
掘削性:エナメル象牙境に達し、それにに沿って側方へ広がる。
穿通性:象牙細管に沿って急速に深部に広がる。
環状:乳前歯の歯頸部に環状に広がる。

<臨床上>
齲蝕1度
齲蝕2度
齲蝕3度
齲蝕4度

<硬組織の種類>
エナメル質齲蝕
象牙質齲蝕
セメント質齲蝕

各 論

エナメル質齲蝕 象牙質齲蝕 セメント質齲蝕
<臨床所見>

1)一般的所見
 エナメル質表面が不透明になり、白濁を示す。

2)小窩裂溝齲蝕
 歯垢の沈着や食片の停滞が起きやすいため、急性の経過をとる。

3)平滑面齲蝕
 歯頸部や隣接部に発生、慢性の経過をとる。

<組織学的所見>

1)一般的所見
 乳酸の産生によって最初の変化は表層の脱灰。脱灰には、小柱鞘・レチウス線の有機質の多い部位から発生、あるいは、小柱自身が先に侵され、のちに小柱鞘に波及。エナメル叢・エナメル葉の構造が進行を助長。
 齲蝕円錐:崩壊層、脱灰層(横線層)、不透明層(混濁層)、透明層。

2)小窩裂溝齲蝕
 急性で穿通性である。着色が軽度。齲蝕円錐の底部は象牙質側にある。層分けでは、特に不透明層が著明に出現。遊離エナメル質の形成。

3)平滑面齲蝕
 慢性なので表在性のものが多い。着色が高度。齲蝕円錐の底部は外側にある。層分けが比較的に明瞭。

<臨床所見>

1)一般的所見
 軟化象牙質を形成。軟化象牙質は、急性齲蝕では、多量に作られ、湿潤性を示す。慢性齲蝕では、量が比較的に少なく、乾燥性で着色が強い。

2)小窩裂溝齲蝕
 エナメル質齲蝕と同様に、急性な経過をとり、深達性を示す。歯髄炎の症候が現れる。

3)平滑面齲蝕
 慢性な経過をとり、表在性を示す。歯髄炎の症候がほとんどなく、あっても晩発性。

<組織学的所見>

1)一般的所見
 研磨標本では、齲蝕円錐は表層から、崩壊層、細菌感染層、脱灰層に分けられる。
 脱灰標本では、感染象牙細管、齲蝕裂隙、溶解原巣(感染空洞)の形成。
 刺激象牙質の形成。

2)小窩裂溝齲蝕
 細菌感染巣が極めて大きく、深部に達する。細菌の侵入は象牙線維と象牙細管の間に管周基質。念珠状に齲蝕病変を拡張。透明層と不透明層の出現は不明瞭。

3)平滑面齲蝕
 脱灰作用は緩慢で細菌は象牙線維を介して侵入、漏斗状に齲蝕病変を拡張。透明層と不透明層の出現は著明。

<臨床所見>

 発生部位:露出した歯根、歯周ポケットの深い根面。酸による脱灰作用で実質欠損をきたし、また、剥離をおこすこともある。

<組織学的所見>

 根面にセメント小皮が形成され、線維性セメント質では、シャーピー線維に沿って歯面に対し垂直方向で進行;ついで、セメント小腔、セメント細管に沿って進行。象牙質に達すると、セメント象牙境に沿って歯面に対し水平方向で進行。

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