□□□□□ 嚢胞性疾患 □□□□□
[目次]

顔裂性嚢胞

1)正中口蓋嚢胞

 ◇硬口蓋の正中部に発生。左右の口蓋突起の融合部の残存上皮に由来すると思われてきたが,最近は,歯原性上皮。◇X線的には,硬口蓋の正中部に円形ないし楕円形の境界明瞭な透過像。◇組織学的には,嚢胞壁は線維性組織で構成され,裏装上皮は上層扁平上皮が多くみられ,繊毛上皮や円柱上皮をみることもある。

2)正中下顎嚢胞

 ◇下顎の正中部に発生。左右の下顎突起の融合部の残存上皮に由来すると思われてきたが,最近は,歯原性上皮。◇X線的には,下顎の左右中切歯の歯根間に円形ないし楕円形の境界明瞭な透過像。両歯根はそれぞれ遠心側へ押しやられる。◇組織学的には,嚢胞壁は線維性組織で構成され,裏装上皮は上層扁平上皮がほとんど。

3)球状上顎嚢胞

 ◇上顎の側切歯と犬歯の歯根部に発生。球状突起と上顎突起の融合部に残存した上皮に由来すると思われてきたが,最近,歯原性上皮。◇20〜40歳代の人にみられ,性差はない。片側性に発生,増大すると,側切歯と犬歯の歯根を開離させる。◇X線的には,側切歯と犬歯の間に逆西洋梨状の境界明瞭な透過像。◇組織学的には,嚢胞壁は線維性組織で構成され,裏装上皮は重層扁平上皮か繊毛上皮,時には立方上皮からなる。

4)鼻口蓋管嚢胞

 ◇鼻口蓋管の残存上皮に由来する。'切歯管嚢胞'と'口蓋乳頭嚢胞'に分ける。

5)鼻歯槽嚢胞

 ◇'鼻唇嚢胞'ともよばれる。鼻翼のつけねの軟組織に発生。球状突起,外側鼻突起および上顎突起の融合部に残存した上皮に由来すると思われてきたが,最近,歯原性上皮。◇30〜40歳代の人にみられ,片側性に発生,通常は無症状。増大すると,鼻腔の中に腫脹をきたす。◇X線的には,軟組織の中にあるので,異常はみられない。骨表面は吸収による浅い陥凹をみることもある。◇組織学的には,

偽嚢胞

1)単純性骨嚢胞

 ◇外傷性骨嚢胞,出血性骨嚢胞,孤在性骨嚢胞とも呼ばれる。長管骨に好発するが,まれに顎骨にも発生。10歳代の男性に多くみられ,好発部位は◇X線的には,境界明瞭な透過像

2)脈瘤性骨嚢胞 (aneurysmal bone cyst)

 ◇30歳代の人にみられ,女性に多い。後発部位は下顎骨の小臼歯・臼歯部。◇X線的には,単胞性で,時には◇組織学的には,嚢胞は血液で充満された多数の腔で構成され,嚢胞壁は多核巨細胞や豊富な毛細血管を含む線維性組織からなるが,嚢胞壁の内面には上皮組織や血管の内皮細胞の被覆はみられない。

3)静止性骨嚢胞 (static bone cyst)

 ◇‘潜伏性骨空洞’,‘特発性骨空洞’とも呼ばれる。通常は◇X線的には,下顎の小臼歯から下顎角にかけての下歯槽管より下の部分に類円形の透過像。◇組織学的には,欠損部に顎下腺の唾液腺組織がみられる。また,線維性組織,脂肪組織,リンパ組織,血管,筋肉組織などをみることもある。

4)術後性上顎嚢胞 (postoperative maxillary cyst)

 ◇上顎洞蓄膿症の手術後,数年または十数年を経て術後性瘢痕組織の中に発生。残存した上顎洞粘膜あるいは粘液腺に由来すると考えられる。◇X線的には,単胞性で,多胞性の時もある。

軟組織の嚢胞

1)類皮嚢胞、類表皮嚢胞

◇類皮嚢胞の場合,皮膚付属器官がみられる。

2)鰓嚢胞

 ◇胎生期の鰓

3)甲状舌管嚢胞

 ◇胎生期の甲状舌管が残留して嚢胞になる。

4)粘液嚢胞

 ◇唾液の流出障害による。粘膜下の小粘液腺に生ずることが多く,好発部位は下唇。◇◇組織学的には,嚢胞壁は肉芽組織で構成され,裏装上皮はない。


1)顎骨内に発生する嚢胞

 A.歯原性嚢胞: odontogenic cyst

  1.含歯性嚢胞: dentigerous cyst
  2.原始性嚢胞: primordial cyst
  3.歯原性角化嚢胞: odontogenic keratocyst
  4.歯周嚢胞: periodontal cyst
  5.側方歯周嚢胞: periodontal cyst
  6.石灰化歯原性嚢胞: calcifying odontogenic cyst
  7.歯根嚢胞: radicular cyst

 B.顔裂性嚢胞: fissural cyst

  1.正中上顎嚢胞: median palatine cyst
  2.正中下顎嚢胞: median mandibular cyst
  3.球状上顎嚢胞: globulomaxillary cyst
  4.鼻口蓋管嚢胞: nasopalatine duct cyst
  5.鼻歯槽嚢胞: nasoalveolar cyst

 C.その他

  1.単純性骨嚢胞: simple bone cyst
  2.脈瘤性骨嚢胞: aneurysmal bone cyst
  3.静止性骨嚢胞: static bone cyst; latent bone cavity; idiopathic bone cavity
  4.術後性上顎嚢胞: postoperative maxillary cyst

2)軟組織に発生する嚢胞

  1.類皮嚢胞・類表皮嚢胞: dermoid cyst; epidermoid cyst
  2.鰓嚢胞: branchial cyst
   リンパ上皮性嚢胞: lymphoepithelial cyst
  3.甲状舌管嚢胞: thyroglossal duct cyst
  4.粘液嚢胞: mucous cyst; mucocele; mucous retention cyst
  5.歯肉嚢胞: gingival cyst of adults
   成人性歯肉嚢胞: gingival cyst of adults

[TOP]