□□□□□ 歯髄疾患 □□□□□
[目次]

基本構造

◇疎性線維性結合組織からなる。成分は線維芽細胞,膠原線維,細胞間質 (主に酸性ムコ多糖)。血管は豊富。神経の大部分は有髄神経。無髄神経は血管と密接な関係にあり,性質は交感性。正常の場合,脂肪細胞と肥満細胞はみられない。

歯髄の退行性病変

<萎縮>
網様萎縮
◇根管完成歯の冠部歯髄に現われ,加齢とともに多くなる。◇また,標本作製時,固定が悪いと同様な変化がみられる。

単純萎縮
◇根部歯髄によくみられ,歯髄固有細胞の萎縮や膠原線維の増生が特徴となる。

<変性>
◇細胞・組織の中に,ある種の物質が異常に蓄積することを変性という。空胞変性,粘液変性,硝子様変性,硝子滴変性,類線維素変性,アミロイド変性,脂肪変性,色素変性,石灰変性などがある。

空胞変性
◇歯髄細胞の中に蛋白性の液体が貯留し,形態学的には,大小の空胞として観察される。

硝子様変性
◇歯髄の結合組織線維の変化で,硝子質が神経や血管の周囲に均一無構造として沈着する。硝子質は,エオジンに淡紅色,ワンギーソン染色に鮮紅色,Mallory染色で青色にそまる。硝子様変性は網様萎縮に随伴し,その後,石灰変性が起こりやすい。

アミロイド変性
◇全身性アミロイド症に伴って歯髄に現れる。アミロイドは,エオジンに淡紅色に染まり,半透明で無構造を示す。ヨード反応が陽性で,コンゴ赤に赤染し,そして各種の塩基性色素に異染性を示すことから,硝子質や膠様質と区別できる。

脂肪変性
◇正常の歯髄にもわずかながら,脂肪の存在が認められる。増齢的に脂肪の量が増える。そして,歯髄炎や代謝障害によるものもあり,出現部位は,象牙芽細胞,歯髄固有細胞,象牙線維である。

石灰変性
◇増齢変化としてみられ,血管や神経に沿ってカルシウム塩が沈着し,冠部歯髄より根部歯髄に多く発生する。◇また,歯髄炎の時,潰瘍面直下の壊死組織や線維性結合組織に石灰変性が現れる。◇石灰変性の部位が増大すれば,象牙細管を持たない象牙粒に変ることもある。

色素変性
◇内因性色素として現れ,出血後に血鉄素(hemosiderin)や類血素(hematoidin)が細胞間に沈着する。◇また,外来性色素としては,歯髄失活剤の亜ヒ酸塗布による黒い色素がある。

<壊死>
歯髄壊死
融解壊死凝固壊死がある。2次感染があった場合,歯髄壊疽になる。

歯髄充血

◇動脈血量が増加している状態を充血という。組織像では,血管内に赤血球の集積がみられる。静脈では"うっ血"という。その惹起原因は。。。

歯髄炎

急性漿液性歯髄炎
◇浸潤細胞はリンパ球・形質細胞・大食細胞が主体で,好中球は極めて少ない。

急性化膿性歯髄炎
◇好中球を主体とする炎症性細胞浸潤。膿球=変性・壊死した好中球。膿瘍については・4を参照。

急性出血性歯髄炎
◇広範囲な出血でリンパ球・形質細胞の浸潤を伴う。

慢性潰瘍性歯髄炎
◇潰瘍とは組織の表層部の欠損。従って歯冠部歯随の露出を指す。また,・4を参照。

慢性増殖性歯髄炎 (歯髄息肉)
◇歯髄息肉という別名に注意。乳歯や若年者の臼歯に多い。増殖したのは肉芽組織。時には被覆上皮(重層扁平上皮)がある。

上行性歯髄炎

参考資料

 1.炎症性細胞=好中球 (主に急性炎症時に出現,細菌を貪食),大食細胞 (組織破片を貪食・除去,それによって抗原を認識,別名は"組織球"),リンパ球・形質細胞 (主に慢性炎症時に出現,抗体を作製),好酸球 (アレルギー・寄生虫に関与),肥満細胞 (アレルギーに関与,heparinとserotoninを含有,放出時"脱顆粒"という)。
 2.肉芽組織=増殖した線維芽細胞+新生毛細血管+炎症性細胞浸潤。

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